阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.21 色づくススキ

阿蘇紀行Vol.21

 実はバイク転倒、また労働の日々で満身創痍のここ最近、ようやく出かける余裕もできたので阿蘇へ。久しぶりの阿蘇はもう秋の装い。涼しげな風が吹き渡っていた。一眼レフで写真を撮る行為は久しぶりではあったのだけれど、その間に写真集をみたりして写真を撮る行為に対して、気持ちは高まっていた。

滝坂次郎

雲が沸き立つ、突風が体を打つ。自然な成り行きに乾杯。

 意気揚々、夜明け前から阿蘇山上へ到着し杵島岳へ登ることにした。草千里の駐車場は夜間も解放されていてとてもありがたい限りだ。

 
 

 日輪が顔をのぞかせる頃、阿蘇谷には急激にもくもくと雲が沸き立ち始めていた。その激しく波打つ雲に感激しながらも登る脚は急いていた。山上はそれまで澄み渡っていたのだけれど、急速にガスが立ち込める。辺りの視界は奪われてしまった。一瞬薄まったガスに温かな光がボヤッと灯るのだ。同時に周囲も一気に温まっていくのが分かった。しかしそれもつかの間、すぐにまたその光が閉ざされてしまう。そんな状況は繰り返し繰り返し、なかなか安定しない。

 ガスだけではなく、この時の風も驚異であった。山頂部では突風が吹き荒れ、それによって体全体が吹き飛ばされそうだ。縦走する鞍部に差し掛かればますます遮るものも無く、ただ滑落を恐れるばかりであった。無理にこの状況に打ち勝たんと行動するのはまずい。そうした直感が気持ちを支配し、早々に当初の目標を諦めて山を下る事にした。今考えると、この決断は自然な成り行きであった。

 
 

 草千里にもガスが立ち込めていたのだけれど、太陽が昇るにつれてそれも解けていくのが分かった。段々段々と水蒸気の層が高くなっていく。光が差し込めば特にその光景は幻想的に輝いて見えた。秋の装いを整え始めたこの時期、ススキが色づき始めている。放牧された馬がまた素晴らしいアクセント。光の濃淡を感じる。この風景との出会いに乾杯。

 時間が経てば遠景も望めるほどになっていた。朝の柔らかな表情に私の心の表情も綻ぶ。ここにきてもう杵島岳山頂にも残るところ少しだけ雲が掛かっているのみ。早朝に経験した険しさと共に、自然に逆らわなかったが故の出会いでもあった。そこからはただただ満足するものがあり、もう熊本市内へ戻る事にした。朝ごはんを阿蘇の道の駅で食べてから。

色づいたススキ

 今回とても楽しい写真行。秋を感じにまた再び阿蘇へ赴いてみたいものだ。朝の自然はまた格別。久しぶりに心身がリフレッシュした気がする。ああまた日々の生活に努められそうだ。ニコンF3でもフィルム撮影し、大満足。

撮影機材/本体:Canon EOS 5DmarkⅣ(フルサイズ:一眼レフ)
レンズ:EF70-300mm F4-5.6 IS II USMEF24-70mm F4L IS USM

ニコンF3で切り取る阿蘇の草原

 実はニコンF3やFEという組み合わせでしてみたかったのは、当時の単焦点レンズを用いた自然写真。星野道夫氏に幾分影響を受けている私にとって、この組み合わせはあこがれの一つだったのだ。彼の写真展で見たポジはとても魅力的で、観る者に圧倒的な感動をもたらす。ルーペで覗いた瞬間、そこには彼がファインダーで覗いていた世界が広がっていた。

 今回、デジタルのズームレンズから少し時代をさかのぼった機材で撮影した気分は上々。現像してみて感動は深まる。本来ならばポジを用いたいところだけど、今回はネガで撮影。


 
 

 フィルムで撮ると、デジタルの世界とはまた異なる世界がそこにあるように感じる。しかしこのフィルムの描写は兎角、記憶を呼び起こす。ニコンF3は露出計がついているし、またシャッター速度も自動で決めてもらうこともできる。完全なマニュアル操作という訳ではないが、気軽にピント合わせに集中できる。

 先にも綴ったが、デジタル一眼にズームレンズを装着して撮るのとは一味も二味も違う。フィルム一眼に単焦点を装着して撮るという行為。これは格別面白い。表現の幅と保存の幅を広げることが出来る気がして嬉しいのと同時に、自分が見た世界というのは絶対ではないというか、見方によって全く異なる魅力が備わっていたのだと思えてきて、そうして感慨に浸るところなのだ。

 
 

 勿論、キヤノンのEOS1VやEOS7Sなど自動なフィルム一眼だって最高に活躍してくれている。TPOに応じて使い分け、それを選ぶ行為すら楽しかったりする。兎にも角にも、阿蘇の自然は美しい。もっともっとその魅力を見つけられる人間でありたい。またその魅力を伝えられる表現や方法を見つけていきたい。そんな風に思えた今日この頃。

 阿蘇には涼しい風が吹き抜けていた。日の光を浴びて輝く草花が美しい。

撮影機材/本体:Nikon F3(35mm:一眼レフ)
レンズ:Ai Nikkor 50mm f/1.4S
フィルム:FUJICOLOR 100-R

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。