【さろく旅】美祢・宇部の鉱山工場見学。USRツーリズム/大人の社会派ツアーで。

宇部興産/薬仙石灰の見学は兎に角見どころ満載。

 工場等立ち入り規制のある場所。一般人が普段簡単に目にすることが出来ない場所。そんな場所は総じて素人的に魅力が詰まっている場所でもある。今回は宇部・美祢・山陽小野田/産業観光バスツアー「大人の社会派ツアー」で宇部興産の工場などの施設を思う存分に堪能することが出来たのだった。ちなみにすべてネガフィルムで撮影している。
滝坂次郎-銘

石灰石鉱山から化学工場。製品の出荷までを堪能する。

 山口県は宇部市。ここに縁ある企業が宇部興産で、日本一長い私道などを所有し、またこの地域で一大産業を興す大企業でもある。ところで、とても美しいカルスト台地の自然風景やそれに伴う鍾乳洞が有名な秋吉台。秋吉台は3億5000万年まえの海底が地殻変動によって隆起し、台地となった場所。サンゴ礁からなる石灰岩が露出する場所として有名だ。この場所は、北九州の平尾台や愛媛高知の四国カルストと並び「日本三大カルスト」と呼ばれる場所。その石灰岩を利用し産業とするのが、この宇部興産である。

 宇部興産はコンクリートから日用品に至るまで、あらゆる分野でその製品が利用されている。石灰石や海水から抽出したマグネシウムを利用した特殊無機材料メーカーだという。昨今USR(企業の社会的責任)という言葉が定着している。こうした社会と共生する企業理念はそもそも創業者の渡辺祐策氏が「共存同栄」(宇部で生まれた利益は宇部に還元する。)という信念からくる企業文化としてそもそも息づいていた。地元に開かれた企業として見学者も積極的に受け入れているそうだ。

 
 

 ところで今回私は、産業観光ツアー「第7章・石灰石の多様性とコンテナターミナル(美祢の石灰石と宇部)」に参加した訳だった。これは「石灰石の採掘>輸送>化学工場>コンテナ輸出」という大まかな一連の流れを観ながら宇部興産の全体像を俯瞰できる有意義な旅となった。ちなみに今回案内してくれた産業観光エスコーターは、宇部化学工業(現・宇部マテリアルズ)企業OBの方。とても詳しく説明して下さり、また安心して見学することが出来た。

 しかし実は一番最初に美祢市にある鉱山に足を運んだのであるが、そこは宇部興産ではなく薬仙石灰という会社。その後に足を運んだ宇部興産道路と化学工場やコンテナターミナルが宇部興産の関連施設群だった。

薬仙石灰(株)をさろく。

 石灰石鉱山の露天掘り。他のツアーではもっと大きな鉱山を見ることが出来るが、今回は比較的小規模の鉱山をさろく。そういえばこの地域は日本ジオパークに指定され、mine秋吉台ジオパークという。読み方は、「美祢(みね)秋吉台ジオパーク」なのだけれども、「mine(鉱山)」にかけて「mine(みね)秋吉台ジオパーク」として登録されているのだと直感的に分かった。

 
 

 工場内に入ってすぐ、あまり見慣れぬ風景に圧倒されていた。

 
  

 薬仙石灰(株)はこの場で採掘した石灰石を原料として、炭酸カルシウム、生石灰、消石灰の製造、加工販売を行っている。生産製造流通の工程全てを一貫している事で品質管理に責任と自信を持つ会社。

 この工場のすぐ脇で鉱山を一望できる。ここは本社鉱山なのであるが、他にも山中鉱山、山瀬鉱山を所有し生産を行っている。美祢市は全国的に見ても高品質な石灰石の産地となっている。

 
 
 
 

 このとき露天掘りの美しさが際立っていて興奮して写真を撮っていた。重機もとても壮観。

 
 
 
 
 

 薬仙石灰では、座学・実験的説明があり、その後に工場長の方が直々に工場の隅々まで案内してくださる。またとても親切丁寧な説明を下さる他の職員の方々にも感銘を受けたほどだった。好印象しかない会社で、笑顔が絶えず自分たちの仕事をとても誇りにされているのが伺えた。何より、そうした仕事をもっともっと知ってほしいという熱心さがビシバシ伝わってくる。

 座学で水の入ったビーカーに生石灰を入れて反応を見ているところ。水と反応して発熱している。結果として消石灰となる。ご存知の通りこれは乾燥材として一般に広く流通している。

 
 
 
 
 

 見学の際にもひっきりなしにトラックが往来している。また粉塵防止の為にあちらこちらに散水されている。

 
 
  
 

 生石灰は焼成温度の違いにより様々な特性をもつ。上記の設備により焼成。この焼成炉も特注のもので、日本鋼管により空いたスペースに合わせて設備を設計したものという事であった。

 
 
 

 設備の制御室。炉の温度などここから制御している。

 
 
 

 石灰石紛によって白く染まる地面。

 そういえば主に学校で使われていたライン材は、よりアルカリ性が強い消石灰であった。これはその強いアルカリ性によってたんぱく質を溶かす。皮膚が荒れたり、また大量に目に入った場合には失明の危険さえあったのだという。しかしこの会社で製品となっている「ホワイトライン」というライン材は石灰石を粉砕した粉で、これは殆ど中性。上記のような問題は無いものになっているとの説明であった。

 
 
 

 石灰製品は環境保全の役割も担っている。ダイオキシン類の除去効果もありゴミ焼却施設で使われたり、燃料排ガスの無害化、ひいては上下水道の浄化、建設残土のリサイクル、口蹄疫や鳥インフルエンザなどの消毒剤。その強いアルカリ性質による特性はこれからもこの分野で必要とされる。

 
 

伊佐の街をさろく。

 萩往還と呼ばれる山陰と山陽を結ぶ道を美祢市を通る。そしてそこを幕末の志士たちが往来していたという。伊佐地区はそこからは離れていたものの宿場町となっていた。ここには以前「伊佐の薬売り」という富山のような薬売りの文化があったそうな。しかし今では一軒もその名残を見ることが出来なくなってしまっている。

 
  

 この地区は明らかに昭和の名残を残していて、そこから見える宇部興産(宇部マテリアルズ)の工場はとてもいい風情がある。

 ちなみに先ほどから奥に見える宇部興産(株)伊佐セメント工場とその横にある伊佐鉱山は、前述の薬仙石灰(株)と土地をほぼほぼ面している形で完全にお隣さん同士。宇部興産(株)伊佐セメント工場はツアーでいう所「第一章、二章、三章のセメントの道」で見学することが出来る。ここまた圧巻の工場と鉱山のようで、是非また参加したいと思っているのだった。

 
 
 

 実はここを訪れる前日には、このすぐそばの宿に泊まっており、そこから秋吉台を撮影しに行ったりしていた。夜帰ってみるとそれは静まり返った街の中、工場だけが稼働していたのだった。勿論、そんな夜の写真も撮影することにしたのだった。

 暗い街の中。時々通っていく車の光跡を撮影。青信号と煙突の航空障害灯の赤が対比となって綺麗に見えた。

 
 
 
 
 

 夜の伊佐地区。とても素晴らしい場所だ。闇夜に溶ける街並みと、浮かび上がる工場の対比が素敵に見える。

 
 
 

 まさか次の日には、日中にこの場所を巡ることが出来るなどとは露しらず。ただただ素敵な風情の街を散策する気持ちよさだけに包まれていた。一つの街の昼の顔と夜の顔を撮影できたのはとても大きな収穫だったように思う。いずれにおいてもやはり、特別良いところである事には変わりないところなのだけれど。

宇部興産専用道路(日本一長い私道)を車窓から眺む。

 美祢市と宇部市を結ぶ宇部興産道路。ここは勝手に立ち入ることはできない私道。距離にして31.94㎞もある。道幅はとても広く、そこをダブルストレーラーと呼ばれる超大型貨物トレーラーが往来する。2両編成で1両につき40トン。合計80トンを積載している。

 
 
 

 もしもこの場所を通過せんとするならば、専用の免許証と許可証を検問所で提示する事が必要なのだ。違反すれば免許証にパンチで穴をあけられ、2つ目のパンチにより免許が剥奪されるとのことであった。

 
 

 車窓から見える貯炭場。沖ノ山貯炭場。

 
 
 

 ダブルストレーラーが横断する道路には踏み切りが設置され、横断時には閉じられる。

 
 

 宇部興産大橋を渡る。渡った先は一大工業地帯だ。

 
 
 

 トレーラー整備場。とても広大な場所に巨大なトレーラーが並ぶ。

 
 
 

 車窓から見える工場群はとてつもなくかっこよかった。

 
 
 
 
 
 
 

 宇部マテリアルズの方々が案内して下さったのであるが、反応シックナーやロータリーキルンなどは撮影出来ないという事であった。反応シックナーのみ降りてから見ることが出来、素晴らしい景観に息をのんだ。ここが撮影できないというのは本当に残念に思う程であったのだが、これは是非肉眼で見るべきものなのであると納得したのだった。あの設備は美しい。

 
 

 宇部マテリアルズの工場でも座学の説明もあったうえ、入浴剤や洗顔石鹸、汗拭きシートなどのお土産という名の自社製品まで頂いた。これらは実際に使用させていただいているが、とても好印象。天然由来の素材にこだわっているようだ。確かに彼らが生業とする、鉱山から採掘する石灰石も海水から抽出するマグネシウムもどちらも天然由来。何やら面白い考え方ではある。

宇部港コンテナターミナルをさろく。

 本来は既に詰め込み作業を終えて船は出航していたそうだ。しかしながら宇部興産の職員さんのお陰で最後の一つの詰め込み作業を見学することが出来た。つまり待っていていただいたのだけれど、申し訳なさを感じるとともに心意気に感謝した次第。

  
 

 当たり前の事ではあるが、とても迅速かつ正確な作業。一連の流れが素晴らしく連携に満ちていた。また安全確認を怠らない。更にはサービス精神まで旺盛とは恐れ入る。

 
 
 
 
 

 この大型重機は可動式で、積み込み作業を終えると貨物船は離岸し、またこのタイヤマウント式クレーンは元あった定位置に戻される。一番下のところに操縦席がある。

 並べられたコンテナの間に見える離岸していく貨物船。

 
 
 

 船で運ばれてきたコンテナの中身を倉庫に格納中。今回は台湾から来た積み荷を並べる作業を見学させていただく。とても巧みなフォークリフトさばきだったのであるが、今回はとてもゆっくり丁寧な作業をしていたと解説をしてくださった社員の方が冗談。

 
 
 タイヤマウント式クレーンは物流経費の削減と荷役の効率化のために導入されているとのこと。このような大型重機が動く様は圧巻。

 

ああ素晴らしき石灰石。ああ素晴らしき美祢/宇部。

 今回、石灰石の採掘、加工、輸送と一連の流れを俯瞰し堪能することが出来た。日本が完全自給する珍しき資源鉱物でもある。またコンクリート製の道路はアスファルト製の道路よりも圧倒的に耐用年数が長いという事など初めて知る事ばかりのツアーだった。何しろ現場の方々から詰め込まれる知識の量は並大抵の物でないのだが、それを咀嚼し知識とするには予備知識が格段に必要なのだとも思うのだった。

 それでも素人でも分かりやすく解説出来るスキルの高さに舌を巻くという連続だった。更にはそれを体感できるというのは幾分その知識の獲得にも弾みがつく。私にとって今回の旅は石灰石という身近な資源が、色がついたように見えるようになったきっかけとなった。これから見える景色にもきっと多くの変化があるということなのだ。

 このツアーは、内容が濃い。とりあえず機会があれば是非ともその他のコースにも参加したいと切に思えた。安心して色んな人にお勧めできるものである事は伝えておきたい。

撮影機材/
本体:Canon EOS 1v(35mm:一眼レフ)、Minolta TC-1(35mm:コンパクト)
レンズ:EF24-70mm F4L IS USM
フィルム:FUJIFILM PREMIUM 400
※今回は全てネガフィルムで撮影した。

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。