黒と白の夏。|生きとし生けるもの-瞬-

生きとし生けるもの「瞬」vol.5

 先日、熊本最大の地方紙。熊本日日新聞で阿蘇のサギコロニーについて報道があった。その場所は実に人の目につきやすい場所。確かに以前より鳥たちが憩い、私も時折訪れている場所であった。しかしサギが営巣するのは今年からで、それより以前カワウやカモが憩う場所であった。何故サギが今年ここに訪れているのかも把握しているつもりだ。それは日本でも最大級であったであろう物凄い規模のコロニーが消滅していたので、そこから分かれたいくつかの集団であるように思えた。実は、今年に入ってからそのような小規模の営巣地をいくつか発見しているのだった。

滝坂次郎

梅雨明けの生き物たち

 
 

 湿気を十二分に含んだ空気が全身に覆いかぶさってくるようだった。止まっていても汗が滴り落ちるような暑さの中、阿蘇の山上はとても涼やかであった。蝶たちが活発に飛び回り蜜を吸う。あるいは恋の相手を探す。山の上でこれから来るカラッとした気持ちの良い夏の訪れを想像していた。

 
 素晴らしく澄み渡る阿蘇谷を眺めるとこの季節らしい草原が広がる。またある時は、米塚の後ろ、雲の間から伸びた光芒が差しこんでいた。

 自然はいつも素晴らしい景色を用意してくれているものだが、その出会い一つ一つがとても素晴らしい。梅雨がようやく開けた今の時期はとても明るい色に満ちている気がする。 

白と黒が共演する。碁石のような集合住宅。

 営巣地の上を周回してそれぞれの寝所へ帰っていくカワウたち。その時一緒にシラサギも周回していた。まるで教科書に載っていたスイミーを思い出すようだった。

 ここには以前からカワウたちが暮らしていたのだけれど、今年から新たな住人が加わった。しかしながら見事なコントラスト。黒いカワウと白いサギが同じ場所に暮らすようになってから更に面白い場所になった。

 
 夏。少しずつ日が傾いてくると淡い水色をした空がとても気持ちが良い。積乱雲がモクモクと立ち上がり、その空はとても魅力的だった。

 鳥たちもその空をとても気持ちよさそうに羽ばたいている。まるで海を泳いでいるかのようだった。

 
 
 

 ある日にはサギが陣取り、またある日にはカワウが陣取る。何か面白い光景だった。

 
 
 

比較的水に近いところにサギたちが止まり、比較的高いところにカワウたちが止まる。杉木の先は気持ちがよさそうだ。

 
 

 カワウやサギは比較的大きい鳥のため、観察もしやすい。しかし本当に彼らを見ていると恐竜のように見えてくるのだった。木の上で飛び跳ねるカワウ。飛んでいる姿もとても恰好良い。

 飛んでいるサギの後ろには、カワウたちが営巣中。またサギは何度も往復してせっせと小枝を集めているものもいる。滑空してくるカワウたちはまるで弾丸のように勢いよく飛ぶ。

 
 
 
 
 
 

 鳥が飛ぶ姿をみてみるととても簡単な事のように見えてしまう。その姿はとても繊細でしなやかで、美しい。

 同居する集合住宅。下のほうでゴイサギが飛び立つ。上の方ではカワウが飛び立つ。ゴイサギは他のサギたちと違って夜行性。今から出勤。

 坊やたちは何やらしきりに親にせがんでいる。かわいげのある三羽だ。

 
 

 返ってくる鳥たちはとても見事な編隊飛行。鶴翼の陣で帰ってくる。万全の警戒態勢だ。

 泳ぎが上手なカワウ。緑が反射してとても綺麗な色彩の中を進んでいく。

 色彩の中を進むのは、帰巣途中のカワウも同じ。光が織りなす情景だ。

歓迎されるか嫌悪されるか。敏感なサギたちの営巣。

 新聞記事では地域住民は彼らを歓迎していた。カワウやサギのコロニーというのは、全国的にとても忌み嫌われている。それは鳥たちの声の騒音と共に、木々を枯死させる糞害も発生するからだ。少なくとも彼らの引っ越し先というのは、人の反応にも左右されるところがある。学術名ニッポニアンニッポン。日本を代表する名を付けられたトキもサギなどと非常に似た食性。そして小規模なコロニーを形成して繁殖していた。しかし上記のような理由や田や畑に入って捕食することから、それを荒らす害鳥として駆除の対象となっていた。少なくともそれだけが日本での絶滅の原因という訳ではなく、生息環境が大きく変化したことに起因する生体数の減少の影響は大きい。だがその生息域の減少はやはりこれもまた人間活動によるものだと言える。現在サギなども現在生息数が減少しているが、カワウについては増加傾向にあるようだ。現在当たり前にみられる生き物たちが、将来は貴重な存在になるかもしれない。

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。