阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.18 梅雨の盛隆

阿蘇紀行Vol.18

 今私の取り組みとしては、毎月毎月毎月…同じ場所に赴きその風景を愉しむことにしている。自然の栄枯盛衰を肌身で感じようという訳で始めてみた試み。全く同じ構図のつもりの写真でさえその変化の著しさに毎回驚いている。仕事や趣味に追われて写真機を持つこともめっぽう少なくなっているが、約一月ぶりの自然写真行は大変すばらしい気分転換。いやそれ以上の価値を持つものだった。
滝坂次郎

大陸からの贈り物。梅雨の形成と大気の汚染。

 大気の関係上このひと月の間は霞みも出る。日本の梅雨を形成するのは、インドと中国の間にそびえるヒマラヤ山脈の影響も大きい。大陸から日本に向かって吹く偏西風はインド洋(南)の湿った温かい空気と、大陸(北)の乾いた冷たい空気を同時に運び、日本上空で合流する。その際、日本上空までせり出すオホーツク海気団や小笠原気団の活動を強め、前線では多くの雨が降るという。

PM2.5のやや多い予報/6月某日

 偏西風に乗って運ばれてくるのは、インドや中国上空の汚染された大気も同様。ここ日本上空はその二つの贈り物が合流するということなのだろう。特に熊本県はその影響が大きく、この時期に大気が澄んでいる事は稀で遠望は白く濁っていることが大半を占める。

PM2.5の少ない予報/7月某日

 
 

定まる事を知らぬ雲と影。緑の被毛をまといし大地。

 
 天気の良好なこの日。火口からは噴煙がもうもうと立っていて、空の青、ガスの白、草の緑がよく景色に反映されていた。更に影がはっきりと映り、動いていく様はいくらでも見ていられる光景だ。

 形は定まる事を知らずに絶え間なく変化している。我が方へ風が吹き上げ帽子は飛ばされそうだ。ガスは次第にこちらへ移動する。少しずつ硫黄臭があたりに漂う。

 一雨二雨と梅雨の雨に濡らされる度に、ぐんぐんと育生する若草。大地はいつの間にかすっかりと緑の被毛に覆われていた。この時期、いわゆる「阿蘇らしい景色」がみられた。

山肌に映る雲の陰影。

 梅雨の熊本といえば、蒸し暑いというのが定番。盆地という訳ではないのだが、九州の中でも夏は蒸し暑く、冬はまた底冷えする。

 しかしこの日は珍しくカラッとした清々しく気持ちの良い気候。蒸し風呂のような日々を過ごしていた直近にあって、心身が爽快さに満ちていた。風は天然の冷房のよう。ひんやりとした風が強い日差しに丁度良い。

 火山はその力強さと美しさを兼ね備える。その一見相反する魅力は共存するのだ。灰に覆われた山肌の直下には緑に覆われた大地。

 

 

草を食む馬。大きな雲の影が動く。雄大な自然。

 放牧の風景。大きな雲の影が動いていく。雄大な自然。馬が走ったり止まったりしながら広々とした草原を思い思いに闊歩していた。

山肌が美しい山々。阿蘇の里山の景色。

 
 入道雲が積もる空。山々にその陰が反映されている。風を感じる雲の移動。日陰に入ると景色は更に美しく見ることが出来た。

 阿蘇谷の集落には大気が滞留していたが、上空は柔らかな水色をしている。目で空気の存在を確かめる。

 一月前にはまだまだ背丈の低かった草花。そろそろアザミの花が点在している。古の噴火口が緑色へと変化していた。鉄分を多く含んだ赤い土。緑色とのコントラストが映えて見えた。

 地震や豪雨によって削り取られた土砂。ひび割れた山肌。所々に草花が茂る。こうした素晴らしい造形は自然の営みの一つでもある。自然に感じる美しさはまさにここにある。風化や浸食が生み出してきた景色は人間には想像もできない規模や年月をかけて起こるもの。ある時は災害によってもたらされる美しさだ。

阿蘇の狐。ホンドギツネは熊本にも。

 そそくさと去って行くホンドキツネ。フェンスの上には小鳥が一羽。

 
 

 先月も見かけたのだけど、再びキツネに出会った。少しずつ遠くにい行きながら何度も振り返るキツネ。あまり脅かさないうちに、早々に退散した。きっとまた会えるのかもしれない。

アナグマ、キジ、キツネとの出会い。

 
 

 豊かな自然は、様々な野生動物たちを育んでいる。勿論、それは阿蘇に限った事ではないのだけれど。狩人の話によれば、雨の降る前というのは、動物たちが活発になる条件でもあるようだ。特に梅雨の時期は野生動物たちが活発に動き回るのだという。実際この雨の降る前の日、明らかに多くの野生動物たちと出会うことが出来た。

自然との出会い。歓喜、感動をアーカイブする。

 6月や7月は青々しく瑞々しい若草が隆盛を極める時期。この季節ぐんぐんと背丈が延びていく草原。同じ場所を幾度となく訪れているというのに毎回新鮮な気持ちで向き合えている。

 この記事を書いているのはほとんど自分のためのもので、少しの発見を再確認する場所となっている。得られた歓喜や感動はやはり現物に適うものではないけれど、写真を見て過去に浸る。過去の自分を知る事がある種、このブログの本旨。兎に角、また一つ思い出が増えた。

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。