阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.15 野焼き後

阿蘇紀行Vol.15

 今年の桜は2週間前後開花が早い。4月になる前に熊本市内の桜は散っている。更にはここ数日間、25度を超える夏日。朝晩は冷えるが日中の暑さは扇風機が欲しい程。更に今年の季節風はPM2.5をより多く運んできてくれている気がする。春霞の良い季節、野焼きは終わり。阿蘇の涼しい風を感じに赴くことにした。

滝坂次郎

自然の変化を捉えてみる

 野焼き後の阿蘇は、その黒い模様が不思議な情景を生み出す。この季節しか見ることが出来ない縞模様(もちろんその時その場所で見る全てが、唯一のものなのだけれど。)。自然をしかと観察してみると一日々々の変化は著しい。この変化を捉えていると、私自身の変化の大きさにも気が付くことが出来る。特に冬から春、夏にかけての風景の著しい変化は、みなぎる生命の力をまざまざと見せつけられる。この力強さは冬、耐え忍んだ結果として生まれる紛れもない活力だ。それはまるで戦後日本の復興と発展を彷彿とさせるかのようだった。

野焼きを済ませた大地が素晴らしい

 
 野焼きを終えた往生岳。黄と黒。その先に見えるのは北外輪山。

阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.14 野焼き前

2018.03.08

 明らかにその景色は、一月ほど前の野焼き前に見たものと一変している。

 アセビの花が開花し始めている。黄金の原っぱ。防火帯。焼かれた大地。衣をまとわぬ大地はこれから少しの間だけ肌寒い。しかしもうすでにこの時、原野のあちらこちらから新緑の芽が顔をのぞかせ始めていた。

キラキラと輝く馬酔木の林

 
 

 野焼きによって荒野のようになった一角。杉林と馬酔木林が隣接する。

 こうした原野と馬酔木林の境界に一本の山道が延びる。風の通り道ともなっていて、とても気持ちが良い散歩道だ。素晴らしき風景が登山者を癒す。

 大地が防火帯によって区切られる。灰に包まれた原野には幾重にも筋が延びている。これより温暖になって草花が茂る頃、放牧した際に出来る牛道だ。温和に草を食む姿を今から想像する。

 

大地に出来た不思議な模様。野焼きによって出来た美しい景色。

 熊本地震以前の九州北部豪雨によってえぐられた山肌。赤土が顔を出している。

 
 

 深く刻み込まれた大地の皺。その真ん中を道路が突っ切る。何台もの車が往来していた。広大な自然の中を走る車は点のようだ。

 この季節の大地は黒く染まり、一部が黄色い斑模様をしている。人の営みが自然の中に形づくる造形にはいつも魅了されている。阿蘇で感じる四季の移ろいはまた格別なのだ。阿蘇といえば、夏。緑に茂る草原がとても有名であるが、むしろその時々に見られる、いやその時にしか見られない風景の素晴らしさをより多く感じたいところだ。

 

 火が入れられた場所は黒く染まって、不思議な模様をしている。

 等間隔で走る車とツーリングバイク。この日も含めて雲一つない快晴が続いている。日中にもなればとても温かだ。こうしたときのツーリングはとても気持ちがよさそうで羨ましくなる。

カルデラ。優しい光に包まれるとき。

 山影が段々延びてくると、古の噴火口に立体感が生まれていた。草のディティールが際立つ。

 
 

 活火山である中岳噴火口へ目を見やる。春の夕暮の朧な淡い色はとても好みだ。この色と霞みはこれから芽生える草花の前触れを見ているかのようだ。飛び交う花粉を連想する空気感が、この黒き大地の芽吹きの到来を告げてくれているようだった。

 斜め線が幾重にも重なる。山脈をあえて強調してくれているような植生。このデザインが目に留まった。

 
 
 

 草千里には多くの馬たちが少しだけ溜まった水でのどを潤していた。そしてその周囲にだけ草の芽が成り出てきている。馬たちはその柔らかな若葉を頬張っているようだった。どうやら彼らも”春の味覚”に舌鼓を打っているようだ。きっとそのほろ苦さを堪能しているに違いない。

 やがて少しずつ草花の芽を出すであろう原野。下から見る模様もとても素晴らしい。

黒き大地と白き空。

 熊本に住んでいて熊本を撮る。きっとそれこそが重要な事なのかもしれない。一見するところ観光客がみて素晴らしい景色も、地元民からみて魅力的ではなかったりする。それとは逆に見慣れているはずだからこそ、見つけられる素晴らしい景色もあって然るべきなのだ。私はこうした視点を今後もっと重要なものとして位置づけたい。そして、たまには他所へ旅して発見し、その発見をもって熊本をまた見直すという風にしていきたい。そしてそれが可能となるならば、より良い人生にきっとなるはずだと思える。まだまだ未知数の熊本。そんな熊本を多く撮り続けて行きたいところだ。今年はその第一歩となるに違いないし、その第一歩にしていこうと思うところである。

数日後には緑が少しずつ生えていた。

 街の畑も少しずつ少しずつ新緑に包み込まれていく。この季節もまた晩秋と同じように色とりどりの美しさに溢れる。ただしこの季節はどこか初々しい、若々しい、生命力を感じる。


 PM2.5が少ない予報。この季節にはとても希少な日である。暫く夏日が続いていたかと思えば、この時は急激に寒さが戻っていた。阿蘇山上には積雪もあったほどだ。そんな訳で4月は2度ほど杵島岳に登ってみた。

 暖かくなるととても芽吹きが早い。日に日に、原野の緑が広がっていく。もう一月もすれば、草原が広がっていることだろう。なぜだろう雉たちをよく見かける季節でもある。

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。