阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.13 冬景色

阿蘇紀行Vol.13

 前日まで雪が降り続いていた阿蘇。厚く暗い雲が蓋をしていたのであるが、少しずつ晴れ間が見えてきた。外輪山を行く車の温度計では、外気温-5℃ほどにもなっていた。日差しはポカポカとして体を包み込んでいく。しかし雲の影に入るとまたその寒さは一段と増すのだ。

 遮るものの無い吹きすさぶ風は、更に体温を奪っていく。日差しによって道路の雪は解け乾いていた。阿蘇谷に差し込む光は幻想的。その光は万物に温かさをもたらしていく。銀世界は普段とは異なる姿を見せてくれた。

滝坂次郎

阿蘇と雪景色

 阿蘇ミルクロードを通り、二重ノ峠を下る。阿蘇山上へ向かい、やまなみハイウェイを行く。その後ミルクロードを通って外輪山を戻っていくというルートで阿蘇ドライブを楽しんだ。産山村の山道は全面通行止めとなっており、いつも撮影するポイントから阿蘇五岳を望むことは叶わず。しかしそれにしてもこの日の風景は私の心身を癒していくのが分かった。人の影はまばらだったのであるが、雪景色の牧野を闊歩する赤牛たち。雪雲が残る青空。それが織りなす光と影の銀世界。久しぶりに見る阿蘇の風景に感動を覚えた。

阿蘇山上の冠雪/牧野に降り積もる外輪山


 
 絶景駐車場から見る阿蘇の景色は、見慣れた風景のはずであった。しかし幾度見てもその光景に感じ入る自分がいる。久住の方を眺めると、冬の素晴らしく澄み渡る空気を感じることが出来る。美しい山々が、私の心身における日々の疲れを労ってくれているのが分かった。

 阿蘇の方では、火口から噴煙漂う。そこにスポットライトが当たっている。あの噴煙は阿蘇を象徴するもの。それは恩恵の種か災難の種か。いや当然ながら、自然は常にそのどちらをも内包す。素晴らしい景色を前にしたときの畏敬の念は、そんな事実から生まれるものだろうか。

雪雲が織りなす光模様/冬の阿蘇谷と農道。

 
 
 

 大地に反映される雲の陰影。そこには「風」と「太陽」が息づいていた。まるで田畑はその存在を映し出すスクリーンの様だった。この装置は、陰影や寒暖、そうしたものとは別に、我々の感情までも映し出してしまうものだったのだ。

 

 この光景を作り出す冬に対する感動、そして待ち侘びる春に対する期待。私の心は不思議とこの光景に吸い込まれていくのが分かった。農道から見る外輪山の光景は甚だ素晴らしいものである。外輪山の山肌。そこには歩いて駆けて、行き交うスクランブルを見ているような忙しなさが反映されている。レースカーテンが風に煽られ、たなびく、床に反映される柔らかな光模様が目前に広がっていた。

根子岳と街をのぞむ風景/寒さ

 子牛が如何にも寒そうに佇み、身を寄せ合っていた。さすがに毛皮を着こんでいても多少なりとも寒いのだろう。

 
 

 スタッドレスもチェーンもある訳ではない。この辺で阿蘇山上へ登るのも諦めることにしたが、それでも阿蘇の光景に満喫した。不思議な事に人の暮らしが見える所、雪の姿はもう消えていた。

根子岳と原野。光が織りなす光景。

 
 

 外輪山から遠く眺望する根子岳の姿が力強い。目の前に広がった原野、一角は耕され畑が筋模様となっていた。丘陵地帯がとても美しい。そこには人の暮らしもある。農場の建物とサイロが風情を醸し出す。こうした人と山の対比によって更にその力強さが強調されている気がする。

阿蘇の峰々にサンサンと降り注ぐ太陽。


 阿蘇五岳でいうところ上記の根子岳。横たわったお釈迦様の顔と言われる。残すところ四つの峰々に太陽が光芒となって降り注いでいた。手前の原野にも雲の影が筋となって表れる。雪上のキャンパスは所々に黄色のスプラッシュ。

 日が傾くとその陰影がはっきりと表れる。柔らかな色合いが穏やかな表情をしている。

阿蘇の冬景色/外輪山の雪模様


 冬の阿蘇らしい光景。この光景をおかずに、阿蘇の道の駅で買ったおにぎりやお弁当などに舌鼓を打つ。

 帰りには彩雲も浮かび、とても贅沢な時間を堪能できたような気持ちになった。阿蘇の冬の光景。しばらく暖冬ぎみでなかなか拝むことが出来なかったが、今年久しぶりにこの阿蘇らしい冬の風景を堪能できたことを嬉しく思える。

白い雪と雲が映える日


 幸運な事にこの日、白い雪や雲が青空に映える。光と影の世界が美しい光景を生み出した。更にPM2.5は少なく遠望も十二分に見渡すことが出来た。舗装された道路は時々訪れる日光に照らされて雪解け、ほとんどいつも通り車を走らせることが出来た。空気感も清々しい。最高のドライブ日和であった。

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。