阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.11 初冬の彩

滝坂次郎

阿蘇紀行Vol.11

 あっという間に暦の上だけではなく、体感としての冬を迎えている。この日は11月20日なのだけど、外輪山の気温は2℃。寒波がやってきて真冬並みの気温となっている。朝起きるのも一苦労といった具合だ。布団に包まれても手足の冷えは一向に収まらない。体が温もるにも時間が掛かる。夜は寒さで目が覚める。ようやく熊本平野にも紅葉の波が押し寄せてきている。阿蘇から平野へ、そして天草方面へ紅葉の波も移動していく。これからもまだまだ紅葉が楽しめるのである。

阿蘇の紅葉

 私がいつも気にかけている場所の一つが北向山原始林である。この場所の紅葉は特に美しい。様々な場所で紅葉を見ているが、この場所の紅葉は格別である。単に色彩の世界がそこにある訳ではなく、冬枯れした木立、常緑の木々、様々な色をまとう木々という具合に、素晴らしく多様性に満ちた場所なのだ。色で埋め尽くされる訳ではないのに、何故だかそこに素晴らしい魅力を感じるのだ。この冬のような日に訪れてみた阿蘇の麓、立野峡谷に位置する北向山の紅葉は今まさに”見頃”といった具合だった。その後阿蘇外輪山を巡ってみたが、底冷えする寒さ。体の芯から冷やされていくのが分かった。それでも草を食む牛たちは元気に原野を闊歩する。その姿に少し羨ましくもあったのだった。

原始林の紅葉


 山脈が輝いていた。この場所に来ると心に養分が与えられているような気持ちになる。


 崩れる岩盤。岩盤を支えた木々。白川が流れる谷間。


 太陽の光を浴びると輝きを増す。嬉々とする木々たち。


 嶺を光が照らす。沢は土砂が流れる。自然の力を見る。


 北向山の紅葉は”名所”と呼ばれる場所にはない魅力がある。植林にはない原始林としての魅力だ。


 山のすぐそばでは開発が行われている。南阿蘇鉄道の鉄道橋。その横を掘削作業していた。ショベルカーと原始林という絵に少し寂しさを感じる。

放牧される原野


 北外輪山ではまだまだ牛たちが草を食んでいた。とても寒いが、全くその寒さを感じさせない牛たち。少し赤らんできた空。そしてこの原野が美しい。


 丘陵を歩く牛。この風景は格別だ。夕陽は万物に黄金の衣をまとわせる。


 遠い目をして草を食む牛たち。


 美味しそうに草を食んでいる。そこに斜陽の光が当たる。牛たちの毛もよく見るととても温かそうだ。


 親子の牛。


 丘陵を埋めるススキ。平行線のような輝きを生み出す。

阿蘇谷を眺めて


 日が沈みゆくにつれて山の影がはっきりとする。だんだんと影が伸びていく。整列した田畑に不規則に山影が写る。


 祖母山系まではっきりと見渡せる空気。田畑の色も冬らしくなってきた。

ここ最近の阿蘇の写真(別の日)

阿蘇山上の初冠雪

 実はこの日、阿蘇山上には雪が積もり、初冠雪となったのであった。根子岳はそれほど雪が積もっていないのであるが、高岳方面には雪が積もっているのが目視できた。まさに冬日だったのだ。午前中は雲に覆われていた熊本。午後になるとスッキリと晴れていくのが分かった。

それに伴って私も阿蘇方面へ出かけることにしたのであるが、北向山の紅葉の状態など知る由もなかった。それでもこの日はかなり美しい峡谷の姿を見ることが出来たのではないだろうか。

 今日は光と雲の具合がとても好かった。優しいベールに包まれた光は素晴らしいコントラストを生み出す。私にそれを切り取るスキルがあるかは別として、肉眼で見る光は癒しそのものであった。行ってみれば必ずと言って良い程、良い出会いがある。これだから阿蘇に行くのはやめられないところだ。さあ今日は温かくして眠りにつこう。

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。