久住紀行-KUJU-KOGEN Highlands- 坊ガツルの秋

滝坂次郎

久住紀行

 阿蘇くじゅう国立公園。熊本と大分にまたがる地域で、火山群とその周辺の広大な草原地帯が特徴の場所だ。山に登ると眺望が開けている場所がおおく、ハイキングはとても気持ちが良い。今回は紅葉の”くじゅう連山”を歩くことにした。タデ原湿原~坊ガツルというルートであるのだが、この地も有明海沿岸の荒尾干潟や東よか干潟と同じくラムサール条約に登録されている。とても自然が豊かで気持ちが良い地域、歩くには持ってこいの場所だ。そしてまたこの日の紅葉は素晴らしく、その景色に感動するものとなった。

くじゅう連山の紅葉。最高の出会い。

 実は当初、長崎は雲仙まで足を運んで山頂付近の紅葉を愛でるところであった。しかし出発する直前にふと阿蘇ひいては久住付近が気になってしまい、そちらへ向かうことにしたのだ。赴く前にはあまり久住の紅葉状況が掴めていなかったのだけれど、この日そちら方面へ足を運ぶことにしたのは結果的に大正解であった。素晴らしい紅葉、そして天候は、私にとっては感動するほどの”出会い”に恵まれることになった。最高の紅葉狩り日和だったのだ。

朝、阿蘇のミルクロードを走る。


 ミルクロードでも美しい丘陵の陰影があって、心惹かれていた。


 草原と畑、丘陵地帯に混在する風景。山肌に朝のひかりが優しく照らす。


 産山付近から”くじゅう連山”の山肌を覆う紅葉を見つける。撮影しようと思ったのだけれど、すぐ近くにキジがおり、飛び立っていった。

山肌をかすめていく光


 この日の天気は一日中晴れの予報。しかし山には低くガスが掛かっていた。ガスはかなりの速度で動き回っていて、その影響でとても美しいスポットライト。紅葉が映えた。


 朝の光が差し込む。影の長い、そして柔らかな光だ。コントラストはあれど強すぎない。この感じが朝夕の特徴的な光。その光の作り出す光景は、情緒を刺激される。


 草原には冬に備え、牧草を刈り取った後のロール。草原に光が当たると発光色が美しい。そしてその色によって紅葉が益々映える気がした。


 露出する岩壁。何かデザイン的で美しかったので撮影してみた。

くじゅうの山道にて


 もうこの頃になると撮影に没頭してしまっていて9時過ぎとなっていた。光も強くなってきていたのだけれど、ガスが上空に架かり光を和らげてくれていた。やはりその濃淡が美しい。


 牧ノ戸峠付近まで行くと逆光が葉を照らしていた。燃えるような色となった紅葉が印象的だった。


 タデ原湿原横の長者原の駐車場。連山にはガスが掛かってしまっていたのであるが、足の速い雲が混在して光の芸術を織りなす。光芒が差しこんだ先には紅葉。まさに天然のスポットライト。その光は全てのものを主役にしてくれているかのようだ。

森の中の静寂を感じて


 山を登っていく際中での出会い。細枝とそれについている葉を日光が照らす。枝が光の衣をまとうとそのディティールが浮かび上がってきた。しっとりとした空気は森の落ち着いた色をさらに引き出してくれる。


 コースには新しい落ち葉の絨毯が敷き詰められていて、その落ち葉でさえ美しい色を未だ保っていた。


 この木には何か惹かれるものがあった。左右に分かれる登山道。露出する木の根。森の中を照らす光は様々な方向へ反射して木々の深くまで届いていた。光の衣をまとう木が力強く見えた。


 燃えたぎる森。

山肌の水墨画


 山肌に投影される光と影の濃淡。


 山肌に見える土砂崩れ。山陰に入るととても体が冷える。それでもわずかな光が入射。手前の山脈を浮かびあがらせてくれた。


 坊ガツルと平治岳。少し展望が開けた所からの眺め。心が洗われていく気がする。


 紅葉する木々に囲まれて、ぽつんと杉が密集する個所もあって面白い。


 一日中雲がひっきりなしに往来していて、高い雲、低い雲というもののお陰で水墨画のような濃淡。感動が感動を呼ぶ。

坊ガツルに差し込む光


 坊ガツルまで下って行ったのであるが、到着すると辺り一面の山々にガスが掛かり底冷えする。霧雨にも包まれて体の芯から冷やされていった。少しだけ顔をのぞかせる山肌。


 厚い雲の合間から一筋の光。その光景が目を奪うのだ。食事を済ませて一服。この頃になるとガスは益々厚くなっていった。そこでこの辺りで下山することに。

情緒豊かな山間の光景

 前述したように、この日の出会いというのは本当に心を奪われるほどに美しく感動的であった。朝からずっとくじゅう連山にはガスが掛かり続けていて、それが返って水墨画のように美しい光と影の芸術を織りなしてくれたわけだ。


 この日は熊本市内は日本晴れであったという。しかし山の天気は変わりやすい。それと同時に、”女心は秋の空”と言われるほどに、この季節の天気も情緒豊かだ。晴れ間が訪れて背中をポカポカと温めてくれるかと思えば、雲に日が隠れてしまえば、体の芯から冷やされてしまう。しかしそんな状況が作り出す情景は、私の言葉で言い表せないほどに感動的なのだ。


 帰りの道中、ミルクロードでの夕景。心地良い疲労感。心には清らかな風が吹き抜けていた。今回のハイキングも子供の頃のようにとても楽しく、また歩きたい気持ちになっている。素晴らしい出会いに乾杯!そして気持ちよく眠りについた。

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。