阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.9 北外輪山

滝坂次郎

阿蘇紀行Vol.9

 刺すような日差しの中。涼を求めて阿蘇へ。しかし阿蘇の方でも、日陰ならばその風は冷たさを保っているものの、更に山特有の日差しによって帰宅後にはこんがりと焼けた。どこかこの季節、健康的な焼け方がほんのり嬉しかったりする。この日、PM2.5の状況は宜しく”非常に多い”という予報であった。しかしながら今の私にはフィルムカメラという心強い仲間もいる。私はこうした状況下でさえ繰り出すことにした。この日のフィルムでの写真は、ブログ記事「阿蘇に赴きカメラを構える。手に持つはフィルムとデジタル。」に掲載している。

真夏の阿蘇外輪山

 この日はPM2.5が多かったとはいえど、低いところは確かに霞みがひどかったが、ここ外輪山から更に上空を見上げるとかろうじて青空を拝むことが出来た。またその雲の陰影が大地へと浮かび上がり、素晴らしいコントラストを生み出してくれるのである。私がこの日持ち歩いたのは、5D4と7D2という二つのデジタル一眼レフにTC-1というフィルムコンパクトカメラであった。こうした炎天下で撮影する場合には、レンズの逆光耐性やレンズフードの有無などの影響もあって、一眼レフはかなりいい色を出してくれる。私の場合、デジタルの場合でもRAW現像時、彩度をいじらない。そういう自己流のやり方でしているのであるが、この深い深い青色は心までも吸い込まれそうになるくらいであった。

青き空と大地


 丘陵地帯の上には高く雲が積みあがる。しかしその雲を流してしまう風が吹き抜ける。時々厚い雲の合間から光が差し込む。そんな光景が美しい。丘陵地帯はこの光を浴びると、特にその丘陵を感じることが出来る。自然のスポットライトはあらゆるものを主役として魅せてくれるのである。この環境の下では、主役脇役は常に交代を繰り返しているようだ。

その雰囲気の捉え方の違い

 デジタルは一眼レフに対して、フィルムはコンパクトカメラであるというハンデはあれど、ネガフィルムの素晴らしいラチチュードには驚くばかりである。しかもこの時期の緑の色の出し方については、フィルムはとても好感が持てる色合いに仕上げてくれるのだ。

デジタル

フィルム

光を受け入れる草原と丘陵

阿蘇ドライブ

 これほど天気がいい日には阿蘇のドライブは気持ちが良い。しかもこうした草原が広がっていてその光景の美しい事美しい事。しかしそれに見とれて事故しないように注しなくてはならないところだ。ただし肌を露出しているとジリジリと肌を焼く。メッシュの長袖を着てくればよかったなどと少し後悔している所なのである。この日、その光の具合の良さにさまざまな場所で写真を撮った。それが故にその日焼け具合は抜群であった。

デジタル

フィルム

浮かび上がる丘陵


 面白い事に、緑に茂る場所があるかと思えば、黄に染まる場所がある。一緒くたに緑と言ってもその中に多くの色を見つけることが出来る。日本語には色に関する言葉が多いのだという。日本という風土の中、自然と隣り合わせに暮らしていた人々。きっとその心には多くの色を灯していたに違いない。その精神性の豊かさは私にも根付いているのか心配だ。

美しく照らされる木々

霞んだ大地と澄んだ青空

走り回る雲と居座る木

ヒゴタイ公園でヒゴタイを愛でる

 ヒゴタイはこの辺りにしか生息しない希少種でもある。このヒゴタイは紫色になるのであるが、それになる前の緑色の状態も可愛らしい。産山村はまだ涼しいため、もう8月になるというのに紫陽花が花を咲かせていた。しかしここに訪れた際には雲と晴れ間という絶妙のバランスを保っていた空のコンディションであるが、一気に雲の量が増えてしまいPM2.5の濃度も高まってしまったようであった。空を見上げてみても青空はなく、この場所から遠く見えるはずの阿蘇五岳などはその存在を隠されたかのように一切見えなかった。それでもヒゴタイの花などを見ていると心嬉しい気持ちになる。

ヒゴタイの花

昆虫と花

緑のヒゴタイ

自分が自然であるということ

 この時期の阿蘇はとても活き活きとしている。青い空に緑の大地に白い雲。たったそれだけの事なのに何にも代えがたい景色である。ところで最近写真を撮ろうというモチベーションが下がっていた。デジタルで撮影する方法に少し頭で考えすぎて煮詰まっていた部分があった。そこに新しい風”フィルムカメラ”というものが吹き込んでからというもの私の中に、もっと気軽に撮ったらいいんだ、下手でいいんだ、という気持ちが芽生えてきた。もっと気の向くまま自然にいよう。自然を主に撮影している自分が自然でなくしてなんとする。そんな気分である。今の阿蘇は、THE阿蘇な風景が広がっている。今のこれこそ人々が思い出す阿蘇なのではないだろうか。フィルムカメラTC-1とネガフィルムのお陰で素晴らしい阿蘇に出会うことが出来た気がしている。

帰り際に出会った夕陽を浴びた雲

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。