阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.4 押戸石の丘

滝坂次郎

阿蘇紀行Vol.4

3月の節句を終えたこの時期、阿蘇では野焼きが行われている。野焼きの行われた牧草地は炭に染まった色となる。未だこの作業を終えていない場所との対比が美しい景色を織りなすのである。そんな丘陵地帯を撮影したいと考えていた私は、その美しさを活かした撮影をしたいと考えた。その為、雲のまばらで光が斜光になる時間帯を今回を選んだ。天気予報としては”晴れ時々曇りの降水確率10%”という最高の気象条件であったが、空気の澄み具合としてはPM2.5″やや多い”という良いとは言えない条件であった。しかしこの機を逃しては私の日程の問題もある。日中はゆっくりとして午後3時からの出立。「遅すぎたか」とも悔やんだが、結果としては満足する事となった。

野焼きのコントラスト

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/40秒

黄金色に染まった草原と炭色に染まった草原。指を組み合わせたときのような丘陵地帯。ちょうど野焼きを終えていない箇所と終えた個所が、実際の光と影によってその印象を強調している。右側の木々は入射光を受けて煌いていた。

恵みの大地

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/125秒

この大地の光景は私の記憶に留めおきたい。なぜならそうした美観は私の期待した絵図からするとはるかに期待値を超えている。人工物では考えられない形状をしていながらバランスがとてもいい。よく考えると、自然物においてはこの状態を数千年数万年と経ている。あらゆるものの調和がとれた姿だと言ってもいいのである。そのように考えると我々の考える人工的調和など机上の空論に過ぎない。

野焼き

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/125秒

野焼き。これは千年の伝統を誇る人間の営みと自然の恵みの融合文化である。野焼きによって多くの生態系が維持され、他地域で失われた生物多様性をも保持しているのである。しかし確かに野兎などが野焼きに焼きだされて逃げるところを目にしたことがある。この点を批判的に見る声もあるのである。しかし私は考える。ただ単に野焼きがこうした動物たちにとって害があるのであれば問題は大きいのであろう。しかし、一度にすべての個所が炎に包まれるわけではない為、十分に逃げる余地があるであろうこと。そして何より、この野焼きによって種の保存がなされていること。つまり食物連鎖の法則によれば炎によって追われた動物たちこそ、この恩恵に授かるであろうこと。この点から鑑みるに私は千年と続いてきたこの伝統こそ自然との調和・共生なのだと考える。

丘陵地帯

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/50秒

右下に見える小屋から左上に向かって伸びる牧草を刈った後の丘の造形が美しかったので撮影。

押戸石の丘

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/50秒

稜線を撮影するに当たって、北外輪山を巡り押戸石の丘へ赴くことにした。この選択は誤りではなかったようである。夕刻の光線はその起伏、形状を強調して浮き彫りにする。一年のうちで最も造形としての変化に富んだ景色であろうと思える。野焼きを終えた場所と残る場所が混在し、そのコントラストを高める。

金色の草原

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/60秒

夕陽が草原を照らす。そうすると金色の草原が目の前に現れる。さながらマルコポーロのいう”黄金の島”である。左上の土砂崩れ箇所を多くたたえた山嶺は大観峰。右上は阿蘇を代表する山の一つである根子岳。

阿蘇の春景

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/30秒

丘という丘がなべて火に包まれるかといえばそうではないようで、多くの場所が表裏のようにして野焼き箇所が続いている。こうして一面が灰となった草原は早くも1か月といわぬ程で芽吹き、半年を待たずして緑豊かな牧草地として機能する。実はその過程さえ興味深い自然の営みを感じることが出来る期間である。私の場合は、桜の開花や紅葉など一般的に”見頃”と言われる時期よりも、実は桜が散り初めて葉桜になりゆくところ、紅葉を終えて葉を落としきる前。そういう時期にとても自然の美しさを感じるのである。そして阿蘇においては、草原に芽吹いていく過程。その姿も風景写真としてはあまり光が当てられることは少ないが、とても美しい。

原野の木立

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/50秒

阿蘇の原野に映える木立。独特の枝葉の付け方をしていて、その形状は独特で興味深い。シルエットのようでいてそうではない景色。この木は柏だと思っているのであるが、どなたか教えて下さる方がおられれば幸い。原野には稜線の間にこの木々が生えていることが多く、野焼きに適応した種なのであろうかといつも疑問に思っている。

原野の日没

EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/15秒

阿蘇の原野で迎える日没。さすがにこの時間に撮影していると寒すぎて手が飛んでいきそうであった。手袋を置いて来てしまったことにちょっと後悔しながら撮影。

元来魅力を備えているのは真実、自然のほうである。

やはり私が想像していた通り。いやむしろそれ以上の景色が私を迎えてくれた。私が特に風景写真を撮っているからこそ感じる事なのであるが、写真である以上それぞれの作品というものに魅力はあるはずだ、しかし元来魅力を備えているのは真実、現実の自然のほうなのであって、私はそれを切り取らせてもらっているだけに過ぎないのである。今回も阿蘇の雄大な自然、途轍もない魅力を備えた自然。そのごく一部を切り取っているのだが、機会があれば”本物”を体験してほしいと思うのである。五感で感じる阿蘇はどんな写真よりも、どんな言葉よりも心を震わせる感動を齎してくれるに違いない。そして出来る事ならヒゴタイキャンプ場などその自然を満喫できる場所に宿泊してほしいのである。夏には多くの虫の群れが光に誘われてやってくる。それは都会では感じる事のない物凄い量の昆虫がやってくる。白いシーツなどをライトに照らしておくとカブトムシやクワガタはあっという間に捕まえることが出来るし、ありとあらゆる昆虫を目にすることが出来る。我々人間の生活ではあまり感じる事のない他の生物の生活を感じることが出来る。ミクロであれマクロであれ、自然は本当に素晴らしい。その魅力を今後も多くお伝えできれば幸いである。最近の報道によれば、阿蘇の観光客は激減しているらしい。熊本・九州に足を運んでいた各地の修学旅行生の行き先は安全上の配慮から多く変更されているという。しかしながら私は今こそこの自然を堪能したいと思うようになった。そしてここには最高の道の駅がある!


▲上記は阿蘇紀行Vol.1。阿蘇谷や外輪山など撮影。


▲vol.2。古閑の滝の厳冬期。凍結した滝。


▲vol.3は阿蘇五岳の中の杵島岳。ああ美しき風景。

「赤ひげ診療譚」を読む-山本周五郎著

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