阿蘇北向山原始林。太古の自然を今に遺す森。野生が息づく日本のDNA。

阿蘇カルデラの麓にある北向山(きたむきやま)は太古日本の自然を今に残す貴重な場所だ。阿蘇北向谷原始林として国の天然記念物としても登録されている。熊本の市街地から車で数十分という場所にこのような自然が残されている事が感慨深い。しかし、この付近は地震の影響で現在通行することが出来ない。滝坂次郎

そこは太古の姿を今に遺す森。阿蘇北向山原始林。

阿蘇原始林の姿

 開発が行われるすぐ隣では、日本元来の自然を留めている森がある。季節によって栄枯盛衰する木々。ある時は隆盛する木があったかと思えば、またある時は枯れゆく。季節に応じた変化はめまぐるしい。その姿はいつみても厳しくまた美しい。特に長陽大橋から眺める景色は壮観である。ここは極限状態で調和した極相林。近年多くの災害がこの地を襲ったが、周辺部の被害をしり目に、原始林そのものは健在だった。多くの地域で起こったこのような出来事がこの熊本でも見られた。極相に至った鎮守の杜が災害に対して極めて強い耐性を持つことを証明した事になる。アクセスとしては、大津方面から長陽大橋を渡った場所に駐車場と展望所がある。この場所からみた自然はすこぶる素晴らしい様相を為す。

阿蘇長陽大橋展望所:
アクセス/地図を表示:
〒869-1404  熊本県阿蘇郡長陽村大字河陽

静のトライアングル

阿蘇北向谷原始林の紅葉
原始林の紅葉は独特である。華々しい木々があったかと思えば、その脇には冬枯れの木々。そんな造形が私の好奇心を大いに引き立てる。

あの時の美しき阿蘇大橋

阿蘇北向谷原始林から見た阿蘇大橋
阿蘇大橋と紅葉。以前より熊本県人に”赤橋”と呼ばれて親しまれていた交通の要。このときは色を塗り替えられていた。大橋が建造物としても美しく、下に出来る陰とのコントラストが美しかった為撮影。ちょうどタンクローリーが大木の下を通りかかった時を狙った。

立野峡谷

阿蘇北向谷原始林から見た立野渓谷の紅葉
北向山と反対側。立野峡谷にある紅葉。立野峡谷は阿蘇の開拓神、健磐龍命(タケイワタツノミコト)が阿蘇のカルデラにたまった水を排出するために一カ所を蹴破った。その場所だとされ、左右が切り立ったV字谷である。その崖上の紅葉を撮影。雲の割れ目から光が照らしたところで撮影。

赤色灯

阿蘇北向谷原始林の木
そこに峡谷ならではの光が届くと輝きを放つ。片隅に赤色灯のような木。

黒川と原始林

阿蘇北向谷原始林と黒川
この流れは黒川といい、白川と合流する。白川は熊本市内を流れて加藤清正の手によってその流れを変えられた。熊本城の外堀としても機能した。

濃霧

阿蘇北向谷原始林の霧
季節の変わり目には濃霧が発生する。水分を含んだ空気が草木の葉を潤し、森全体の雰囲気も静謐さを増す。常に吹き付ける風によってその霧は留まる事は無い。稜線に浮かび上がる木々のシルエットが印象付ける。

紅葉の季節・晩秋

阿蘇北向谷原始林の紅葉
あらゆる色が交錯する。

新緑の季節・初夏

阿蘇北向谷原始林の新緑
緑の中にも幅広いコントラストが存在し、原始林ではその多彩さを見て感じることが出来る。この表情の豊かさは原始林ならではのものである。

夕陽の森・晩夏

阿蘇北向谷原始林の夕陽
夕陽によって赤く染まった木々。また斜陽の光はそのディティールを抽出し、原始林の木々の形状に刺激される。

森の稜線

阿蘇北向谷原始林の稜線
森の稜線を光が照らす。

七変化

阿蘇北向谷原始林の色彩
一本の木が、黄、橙、赤とその色彩を変えていく。またその傍らには葉を落とし切ろうとしている木と落とし終えた木が存在しており、その多様な変化を目の当たりにできた。

野生動物の宝庫

阿蘇北向谷原始林のホンドテン対ニホンザルのGIFアニメ
毎月1度は訪れるほどの場所だったが、ある時駐車場に車を止めるとすぐに甲高い怒鳴り声のようなものが聞こえてきた。すぐ裏の丘で、ホンドテンとニホンザルの喧嘩が起こっていた。群れで囲むニホンザルと単体で切り込むホンドテンの姿だ。テンの防戦一方かと思いきや反撃に出たりと野生動物界で起こる摩擦の光景は意外性に富んだものだった。

阿蘇北向谷原始林のホンドテン対ニホンザル
子ザルを大切に抱きかかえた母ザルの姿もあった。

災害に見舞われた立野峡谷

熊本地震による立野渓谷の土砂崩れ
熊本地震により立野では大規模な土砂崩れが発生した。上記の赤橋こと阿蘇大橋もこの災害により崩落することになった。熊本阿蘇を結ぶ主要幹線道路(国道57号線)は4車線化が進み、大動脈としての役割を担っていた。しかし現在この道は土砂災害により塞がれている。無人でコントロールされた重機が災害現場で作業を続けている。

熊本地震後の立野峡谷

森林の魅力

阿蘇北向谷原始林と渓谷

 花見や紅葉狩りといった文化はこれまでもあり、盆栽や花札、俳句など身近に四季を感じ花鳥風月を愛でる事も特別な事ではない。しかし元来の原始林を見ていると、これこそ我々のDNAに息づく魂の根本なのだと感じる。野生のヤマザクラやヤマフジは華々しさはないが、可憐で多大なる魅力を秘めている。同時にその周囲の木々もまた総じて魅力的だ。調和のとれた森の一角に季節の花が彩る。そうした環境そのものが魅力なのである。木を見て森を見ず。この原始林に通いつめた私は、この場所から自然の愛で方、付き合い方について示唆を得たような気持ちになった。この杜は静謐をたたえる。私はそこに精神を揺さぶる畏敬を覚えるものである。

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学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。