阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.2 古閑の滝

滝坂次郎

阿蘇紀行Vol.2

今回はVol.2。阿蘇には様々な魅力があり、冬にはそれらしい光景を見ることが出来る。実はこの撮影日にはPM2.5の影響により視野はあまり良くなかったので、近影撮影に心持ちもシフト。熊本では春先から夏にかけてとても霞がひどくなる日が続く。PM2.5や黄砂の影響はとても大きい。今までそこで見ることが出来ていたものが見えなくなってしまうのだ。山登りに行ってもその遠望の景色を楽しむことすら出来なくなってしまうのである。しかし物は考えようで、「遠望がよくなければ近影でいいじゃないか」と最近ようやく思えるようになってきた。その時、ほど良く撮らせてくれるものを撮れれば、それだけで至福だ。撮りたいものにこだわりすぎると本当にいい表情を撮り逃してしまい、そういう時自分の心も浮かなくなり、撮れるものも撮れないまま帰宅することになってしまうのである。心が開放されて健やかなるとき、写真にもそれが反映され、一日が充実感に包まれる気がしている。

古閑の滝

古閑の滝EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/40秒

夏に訪れると迫力に欠けるこの滝は、厳冬期に訪れるとその姿を一変させ、ド迫力のその姿をようやく現わす。3日ほど前の寒波は全国を雪、雪、雪と白一色に染めてしまう程のものだったが、ここ熊本でも気温が下がり再び古閑の滝の氷結を拝むことが出来た。おそらくこの姿を見られるのは今年最後であろうと思う。こうした圧巻の被写体を前にしたとき、撮らされてしまうことが私にはよくある。つまりその魅力を素直に撮影できない事があるのだ。まずは画角いっぱい古閑の滝をおさめた。

きのこ

きのこEOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/40秒

私にはこうしたモコモコの氷がキノコかカリフラワーのように見えてきたのである。どこか可愛らしい。大きなものから小さなものまである。私にとってこのキノコ的魅力があった部分をクローズアップして撮影している。とても面白い形状に心は躍る。

歯根

滝の上部EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/30秒

滝の上部に目を移すと翼のように折り重なる氷柱。これをよく見ていると今度は歯根のように見えてきて仕方がなくなってきた。このとき比較的気温も上がってきていたため、少しずつ少しずつ氷柱が落ちてきており、「ドーン、バーン」と物凄い音を周囲に轟かせていた。春が近づくと落ちるこの音、近隣にも聞こえており、古来より春の訪れを知らせてくれる風物詩となっていたそうだ。

水の造形

水の造形EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/EXTENDER EF1.4X III/三脚/ISO100:F16:1/60秒

古閑の滝の下部。すぐ近くでその形を眺めることが出来る。とても不思議な凍り方をするものだと感嘆する。上下左右は凍り付いているにもかかわらず、ここだけ凍らずに中を見ることが出来た。流れる水は氷を伝い、更に氷を長く伸ばす。北海道では冬の祭典、さっぽろ雪まつりが有名であるが、ここ熊本でも氷の祭典があっていると言っても良いだろうか。

氷柱

氷柱EOS 5D Mark IV/EF24-70mm F4L IS USM/三脚/ISO100:F16:30秒

下には水が溜まり、その水に向かって氷柱が伸びる。この状態の美しさを撮りたいばかりにNDフィルターをかけ、水面の揺らぎを除去した。この日は突風が吹き、煽られ方も凄かったので、三脚が多少揺れたため失敗作となった写真もいくつかある。しかし少し長い露光時間だったにもかかわらずぴたりと静止した写真。意外に面白く撮れていたので満足した。

ごはんつぶ

ごはんつぶEOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/50秒

ご飯つぶにさえ見えてくる氷の芸術。氷の丸い形。その形をしながらも透明のものと白いものがあった。その対比が美しかったので撮影。ここを撮影している時全てそうなのであるが、チョロチョロと水が流れる音がしていて、その揺らぎの音でとても癒されたと思う。こう言ったものを1/Fゆらぎと言って、それは多くの人がそれを癒しだと認識するもののようだ。実際撮影時間すら忘れて夢中になっていた。寒さなどは何処へやら多くの時間をここで過ごし心をを癒すことが出来た。

上記はその揺らぎを動画にしてみた。写真だけでは伝えられない部分も表現できていたら幸い。

断崖絶壁

断崖絶壁EOS 5D Mark IV/EF24-70mm F4L IS USM/三脚/ISO100:F16:1/40秒

古閑の滝を撮影していると異なる場所に光が差し始めた。その光は断崖の岩を指し示していた。私はその瞬間カメラを向ける。この日は曇りなのか晴れているのかその霞み方がひどく、よく分かっていなかったのだが、日の光が差したことで曇っていた事をようやく理解した。この岩肌、とても魅力的だったのであるが、スポット光のおかげでようやくその魅力を捉えることが出来た。

木の根

木の根EOS 60D/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/EXTENDER EF1.4X III/三脚/ISO100:F16:1/15秒

ふと目を凝らすと、断崖絶壁。そそり立つ壁に木が生えている事に気付く。90度どころではない、反り返る岩肌にしっかりと根を張る植物の姿に驚いた。あの場所に何年も息づく生命があるのである。これだから自然というのは面白い。ところで古閑の滝を撮影し終えて山道をとぼとぼと帰っているとご高齢の方々が古閑の滝を目指しておられた。しかしあまりの坂道に耐えきれず数人が座り込んでへとへとに。「まだどれくらいありますか?」「あと3分の1くらいありますよ」「ひええええ」「でも上り坂はもう少しだけですよ」「なら行けそう!」と和やかな会話。しかし本当にここは結構運動になる。

阿蘇谷の夕暮

阿蘇谷の夕暮EOS 5D Mark IV/EF24-70mm F4L IS USM/三脚/ISO100:F16:1/125秒

気が付くと古閑の滝で躰が冷え切ってしまったのであるが、その後は温泉にて体を温める。ここでは体をじっくりと労わることが出来た。露天風呂で空を見上げると雲が悠然と動いていて、青空も見えてきていた。青空が見えなくなるほど霞んでいたのである。しかし15時を過ぎる頃になるとその霞みもなくなりつつあった。雲の塩梅もいいので脳内でシュミレーション。雲と光を活かした撮影をしてみようと考えた。阿蘇谷を傾いた太陽が優しく照らす。雲の陰と明るいところのバランスがとてもいい。

爪痕

古傷EOS 5D Mark IV/EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM/三脚/ISO100:F16:1/160秒

阿蘇には多くの爪痕が残っている。そんな土砂崩れの後を雪が積もり、また夕陽が横から照らす光により美しさを増していた。ディティールが際立ち、その荒々しさ、猛々しさがある。私はこれを撮影していて「これはモノクロームにぴったりだ!」と思った。最近その表現力の高さにとても驚いている。それまでカラー写真しか撮っていなかった私にとってはとても新鮮みに溢れたものなのだ。

いや私は温泉に入りたかったのである。

阿蘇にいくと図らずもいい出会いがある。今回は良い光に恵まれなかったといってもいい。それに何度も言うが霞みがひどく、遠望はとてもではないが期待できなかった。そんな中でも自然は私を包み込む包容力があるのである。古閑の滝の音を聞いているとそんなことも忘れてしまう何かがあるのである。しかも、そこには癒しだけがあるのではなかった。時々こだまするほどの轟音が響き渡る。それは一種の恐怖でもあったのだ。自然というのは優しさと厳しさを併せ持つという。今回はそんな自然の両面を垣間見ることが出来たのである。それに遠望がダメならば近影。そういう心持ちであればとても健やかに写真を撮ることが出来る。「撮らせてもらえるものを撮る。」それが出来ているとき失敗は無い。撮れ高が良ければ良い程嬉しいのは確かであるが、”ただその場所に行って、その出会いがあるだけで満足できる日”というのは結果的にいい写真が撮れて満足な一日となることが多い気がしている。いや私は写真を撮りに来たのではない、ただ温泉に入りたかっただけなのである。この日は心身共に癒された日となった。

阿蘇紀行-ASO GLOBAL GEOPARK- Vol.1 北外輪山

2017.01.23
▲上記は阿蘇紀行Vol.1。阿蘇谷や外輪山など撮影。

ABOUTこの記事をかいた人

学生時代にドイツを一周。ジャーマンレイルパスを使って鉄道の旅だった。そのとき始めて触れる空気に圧倒されたのだが、南ドイツに行くにつけ何か懐かしい空気を感じていた。放牧された牧野や美しい川が流れる渓谷。森林の中での散策。そんなときふと思い出したのは地元熊本の阿蘇だった。その景色や空気は阿蘇と似ていた。しかし、南ドイツにも阿蘇にも代えがたい魅力がある事に気づく。私は日本を一周した事がない、それと同じで多くのドイツ人も国を一周した事はないに違いない。私は極限られた自分の生きてきた土地のことも知らなかった事に愕然とする。生きている場所、熊本の魅力は何か、日本の魅力は何か、きっと多くの発見が身近に潜んでいるに違いないと思えた。そんな地元の魅力を発見、いや再発見していくのがこのブログの目的だ。多くの事実を知り、多くの方とそれを共有していくことが出来れば、私にとってこの上のない喜びである。